過去問解説(企業経営理論)_2022年(令和4年) 第33問

難易度・正答率・重要度

  • 難易度: ★☆☆☆☆(PLCの基礎)
  • 正答率: ★★★★☆(正答率75%前後)
  • 重要度: ★★★☆☆(製品戦略の定番)

問題文

製品ライフサイクル(PLC)に関する記述として、最も適切なものはどれか。


PLC の衰退期にある市場の顧客は一般的にロイヤルティが高いため、企業は当該事業を維持し続けることで、売り上げは小さくとも高い利益率を実現できる可能性は残されている。
PLC の成長期において、通常、企業は自社製品の品質、特徴、パッケージといった特性に手を加えたり、自社のサービスに新しい利用シーンを提案したりして、顧客ニーズの多様性に合わせたマーケティング対応に努める。
PLC は製品や市場の動きを確実に予測する概念であるため、自社製品がこれからたどるであろう各段階の将来的なマーケティング戦略の策定に主に利用される。
機能やデザインを付加した新製品を出すことで旧製品の魅力を下げ、新製品への買い替えを促進する計画的陳腐化は、当該製品カテゴリーの PLC を短縮することにつながるため、実行は避けるべきである。
すべての製品やサービスが PLC の 4 つの段階すべてを型通りにたどるわけではなく、一度導入された製品やサービスが、はやったり廃れたりしながら何世代にも渡って続くような場合もある。こうした PLC はファッドと呼ばれている。

出典:中小企業診断協会|2022年度 第1次試験問題|企業経営理論(PDF)


解答

正解:ア


解説

ア:〇
 衰退期でも、ニッチに残るロイヤル顧客を基盤に採算を確保できる場合がある。固定費の圧縮や選択的投入で小規模ながら高利益率を維持する戦略が取り得る。

イ:×
 顧客ニーズの多様化に合わせた製品特性の拡充や利用シーン提案は主に成熟期で強化される施策。成長期では需要拡大・普及が中心で、競争は激化するがライン拡張の本格化は成熟局面が一般的。

ウ:×
 PLCは標準的なパターンを示す説明概念であり、個別製品の将来を確実に予測するものではない。参考枠組みとして現状診断や施策の方向づけに使う。

エ:×
 計画的陳腐化はカテゴリーを必ず短縮させるわけではなく、更新サイクルを早めて収益機会を増やす意図で用いられることもある。「避けるべき」との一般化は不適切。

オ:×
 短命に終わる一過性の流行は「ファッド」。世代を超えて反復的に続くのは「ファッション・サイクル」や「クラシック」であり、ファッドではない。


学習のポイント

  • PLC各期の施策
    成長期は普及拡大、成熟期は差別化・ライン拡張、衰退期は選択集中とニッチ維持。
  • PLCの限界
    予測の確実性はない。市場構造・技術革新・競争動態で形が変わる。
  • 用語整理
    ファッド=短命な流行、ファッション・サイクル=波を繰り返す長期的流行、クラシック=恒常的需要。