過去問解説(経営法務)_2023年(R5年) 第2問

難易度・正答率・重要度

  • 難易度:★★☆☆☆(基本知識の組み合わせ。やや思考を要する。)
  • 正答率:★★★★☆(正答率70〜90%。比較的易しい。)
  • 重要度:★★★★☆(頻出論点。制度理解に直結。)

問題文

監査役会設置会社における取締役及び監査役の株主総会における選任と解任の決議に関する事項の記述として、最も適切なものはどれか。

取締役及び監査役の解任に関する株主総会の決議は、いずれも、定款に定めることにより、議決権を行使することができる株主の議決権の3分の1を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の過半数をもって行うとすることができる。
取締役及び監査役の解任に関する株主総会の決議は、いずれも、定款に別段の定めがない場合、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の3分の2以上に当たる多数をもって行わなければならない。
取締役及び監査役の選任に関する株主総会の決議は、いずれも、定款に定めることにより、議決権を行使することができる株主の議決権の5分の1を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の過半数をもって行うとすることができる。
取締役及び監査役の選任に関する株主総会の決議は、いずれも、定款に別段の定めがない場合、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の過半数をもって行わなければならない。

出典:中小企業診断協会|2023年度 第1次試験問題|経営法務(PDF)


解答

正解:エ


解説

ア:✕
 解任に関する株主総会の決議は、特別決議が必要とされるため、定款で通常決議に変更することはできない。定款による緩和が可能とする本肢は誤り。

イ:✕
 解任に関する株主総会の決議は、特別決議で行う必要があるが、出席要件は「過半数」であり、「3分の2以上の出席」とする本肢は誤り。多数要件と出席要件が混同されている。

ウ:✕
 選任に関する決議は通常決議であり、定款で出席要件を緩和することは可能だが、「5分の1」まで緩和できるかは制度上の限界がある。出席要件の緩和幅に誤りがある。

エ:〇
 取締役及び監査役の選任は、定款に別段の定めがない限り、通常決議で行われる。すなわち、議決権の過半数を有する株主が出席し、出席株主の議決権の過半数で決する。正しい記述である。


学習のポイント

  • 選任は通常決議、解任は特別決議という区別を明確に理解する。
  • 定款による変更が可能な範囲と、変更できない事項(特別決議要件など)を整理する。
  • 出席要件と多数要件の違いを正確に押さえることが重要。