過去問解説(経営法務)_2023年(R5年) 第8問

難易度・正答率・重要度

  • 難易度:★★★☆☆(複数知識の統合や、誤答肢の吟味が必要。)
  • 正答率:★★★☆☆(正答率50〜70%。標準的な難易度。)
  • 重要度:★★★☆☆(頻出ではないが、学習価値が高い。)

問題文

民事再生手続における双務契約の取り扱いに関する記述として、最も適切なものはどれか。なお、別段の意思表示はないものとする。


再生債務者に対して売買契約に基づき継続的給付の義務を負う双務契約の相手方は、再生手続開始決定の申立て前の給付に係る再生債権について、弁済がないことを理由として、再生手続開始後は、その義務の履行を拒むことができない。
再生手続開始前に再生債務者の債務不履行により解除権が発生していたとしても、相手方は、再生手続開始後は当該契約を解除することができない。
注文者につき再生手続開始決定があった場合、請負人は、再生手続開始決定があったことを理由に当該請負契約を解除することができる。
賃貸人につき再生手続開始決定があった場合、賃借人が対抗要件を具備していたとしても、賃貸人は、双方未履行の双務契約であることを理由に当該賃貸借契約を解除することができる。

出典:中小企業診断協会|2023年度 第1次試験問題|経営法務(PDF)


解答

正解:ア


解説

ア:〇
 再生債務者に対して継続的給付義務を負う双務契約の相手方は、再生手続開始後において、申立て前の未払いを理由に履行を拒むことはできない。これは再生手続の円滑な遂行を目的とした規定であり、正しい記述である。

イ:✕
 再生手続開始前に解除権が発生していた場合、再生手続開始後であっても契約の解除は可能である。解除できないとする本肢は誤り。

ウ:✕
 再生手続開始決定があったことのみを理由に請負契約を解除することはできない。契約上の解除事由が必要であり、本肢は誤り。

エ:✕
 賃借人が対抗要件を具備している場合、賃貸人は再生手続開始を理由に賃貸借契約を解除することはできない。解除できるとする本肢は誤り。


学習のポイント

  • 双務契約においては、再生手続開始後の履行拒否は原則認められない。
  • 再生手続開始前に解除権が発生していた場合は、手続開始後でも解除可能。
  • 再生手続開始決定のみを理由とする契約解除は原則認められない。
  • 賃貸借契約においては、賃借人が対抗要件を備えていれば、保護される。