難易度・正答率・重要度
- 難易度:★★★☆☆(複数知識の統合や、誤答肢の吟味が必要。)
- 正答率:★★★☆☆(正答率50〜70%。標準的な難易度。)
- 重要度:★★★★☆(頻出論点。制度理解に直結。)
問題文
以下の会話は、X株式会社の代表取締役である甲氏と、中小企業診断士であるあなたとの間で行われたものである。この会話を読んで、下記の設問に答えよ。
甲 氏:「弊社は、米国ニューヨーク市に本拠を置くY社から商品を輸入し、国内で販売しようと考えています。それに当たって、Y社から届いた契約書案を検討しているのですが、以下の条項はどのような内容でしょうか。」
1. This Agreement shall be governed by and construed in accordance with the laws of the state of New York, the United States of America, without reference to conflict of laws principle.
2. All dispute arising out of or in connection with this Agreement, including any question regarding its existence, validity or termination, shall be referred to and finally resolved by arbitration in New York City, New York, the United States of America by the American Arbitration Association in accordance with the Arbitration Rules of the American Arbitration Association.
あなた:「1項はAを定めており、2項はBを規定しております。御社は日本でY社から輸入した商品を販売されるとのことですので、準拠法は日本法で提案するのはいかがでしょうか。」
甲 氏:「ありがとうございます。その点については、Y社と交渉しようと思います。裁判と仲裁はどのような違いがあるのでしょうか。」
あなた:「それぞれメリット・デメリットがありますので、その点も含めて、知り合いの弁護士を紹介しますので、相談に行きませんか。」
甲 氏:「ぜひ、よろしくお願いします。」
(設問1)
会話の中の空欄AとBに入る記述として、最も適切なものはどれか。
(設問2)
会話の中の下線部の裁判と仲裁に関する記述として、最も適切なものはどれか。なお、本設問における裁判と仲裁に関する記述は、日本法を前提に考えるものとする。
出典:中小企業診断協会|2023年度 第1次試験問題|経営法務(PDF)
解答
設問1:ア
設問2:ア
解説
(設問1)
ア:〇
1項は準拠法条項であり、ニューヨーク州法に従って契約を解釈する旨を定めている。2項は仲裁条項であり、米国仲裁協会による仲裁に付託することを規定している。英文契約の典型的な構成であり、正しい記述である。
イ:✕
2項の内容は仲裁による解決を定めているが、本肢は裁判所の管轄とする内容であり、契約条項と一致しないため誤り。
ウ:✕
準拠法はニューヨーク州法であり、連邦法ではない。準拠法の誤認があるため誤り。
エ:✕
準拠法および紛争解決方法の両方が契約条項と一致しないため誤り。
(設問2)
ア:〇
ニューヨーク条約により、加盟国でなされた外国仲裁判断は、原則として他の加盟国でも執行可能である。国際的な仲裁制度の基本的な枠組みであり、正しい記述である。
イ:✕
裁判は原則公開だが、仲裁は非公開が原則である。判断も公開されない場合が多く、本肢は誤り。
ウ:✕
仲裁は話合いではなく、仲裁人が判断を下す手続きである。合意形成ではなく、裁定による解決であるため誤り。
エ:✕
仲裁判断に対しては、原則として裁判所に不服申立てはできない。限定的な取消事由を除き、仲裁判断は最終的なものとされるため誤り。
学習のポイント
- 英文契約では、準拠法条項と紛争解決条項(裁判/仲裁)を明示することが重要。
- 仲裁条項は、裁判所ではなく仲裁機関による解決を定めるもので、国際取引で頻繁に用いられる。
- ニューヨーク条約は、外国仲裁判断の承認・執行を国際的に担保する制度。
- 仲裁は非公開で迅速な解決が可能だが、原則として不服申立てはできない。