過去問解説(経営法務)_2023年(R5年) 第18問

難易度・正答率・重要度

  • 難易度:★★★☆☆(複数知識の統合や、誤答肢の吟味が必要。)
  • 正答率:★★★☆☆(正答率50〜70%。標準的な難易度。)
  • 重要度:★★★★☆(頻出論点。制度理解に直結。)

問題文

製造物責任に関する記述として、最も適切なものはどれか。


外国から輸入した製品の欠陥により損害が発生した場合、輸入事業者は製造物責任法による損害賠償責任を負わない。
製造物責任法は、過失責任が原則である民法の不法行為責任(民法第709条)の特例として定められたもので、製造業者等の過失や、過失と欠陥の因果関係の証明に代えて、被害者が製品に欠陥があることと、その欠陥と損害との因果関係を証明すれば、損害賠償を請求できるようにしたものである。
製造物の欠陥によって、他人の財産等に損害が発生しておらず、製造物自体に損害が発生したのみであっても、製造業者は製造物責任法による損害賠償責任を負う。
製品の製造は行わず、製造物にその製造業者と誤認させるような氏名の表示をしただけの者は、製造物責任法による損害賠償責任を負わない。

出典:中小企業診断協会|2023年度 第1次試験問題|経営法務(PDF)


解答

正解:イ


解説

ア:✕
 製造物責任法では、輸入事業者も「製造業者等」に含まれ、欠陥による損害に対して責任を負う。責任を負わないとする本肢は誤り。

イ:〇
 製造物責任法は、民法の不法行為責任の特例として、過失の有無にかかわらず、欠陥と損害の因果関係を証明すれば損害賠償請求が可能となる制度である。正しい記述である。

ウ:✕
 製造物責任法の対象となる損害は、他人の生命・身体・財産に対する損害であり、製造物自体の損害は対象外。よって本肢は誤り。

エ:✕
 製造業者と誤認させるような表示をした者も、製造物責任法上の「製造業者等」に該当し、責任を負う。責任を負わないとする本肢は誤り。


学習のポイント

  • 製造物責任法は、過失責任ではなく「欠陥+因果関係」による無過失責任が原則。
  • 輸入事業者や表示による誤認者も「製造業者等」に含まれる。
  • 製造物自体の損害は対象外であり、他人の生命・身体・財産への損害が対象。
  • 民法との違いや、責任の範囲・要件を明確に整理しておくこと。