過去問解説(経営法務)_2023年(R5年) 第21問

難易度・正答率・重要度

  • 難易度:★★★☆☆(複数知識の統合や、誤答肢の吟味が必要。)
  • 正答率:★★★☆☆(正答率50〜70%。標準的な難易度。)
  • 重要度:★★★☆☆(頻出ではないが、学習価値が高い。)

問題文

相殺に関する記述として、最も適切なものはどれか。なお、別段の意思表示はないものとする。


差押えを受けた債権の第三債務者は、差押え前から有していた差押債務者に対する債権を自働債権とする相殺をもって差押債権者に対抗することができない。
相殺の意思表示は、双方の債務が互いに相殺に適するようになった時にさかのぼってその効力を生ずる。
不法行為から生じた債権を自働債権として相殺することはできない。
弁済期が到来していない債権の債務者は、その債権を受働債権として相殺することができない。

出典:中小企業診断協会|2023年度 第1次試験問題|経営法務(PDF)

解答

正解:イ


解説

ア:✕
 差押え前に有していた債権を自働債権として相殺することは認められており、差押債権者に対抗可能である。対抗できないとする本肢は誤り。

イ:〇
 相殺の意思表示は、相殺適状(双方の債務が相殺可能な状態)となった時点にさかのぼって効力を生じる。正しい記述である。

ウ:✕
 不法行為から生じた債権であっても、一定の要件を満たせば自働債権として相殺することが可能である。全面的に否定する本肢は誤り。

エ:✕
 弁済期が到来していない債権は、受働債権として相殺することが可能である。できないとする本肢は誤り。


学習のポイント

  • 相殺の効力は、相殺適状となった時点にさかのぼって生じる。
  • 差押え前の債権による相殺は、差押債権者に対抗可能。
  • 不法行為債権や未到来債権も、一定の条件下で相殺可能である。
  • 相殺の可否は、債権の性質・時期・相殺適状の有無によって判断されるため、条文の趣旨を整理しておくこと。