過去問解説(企業経営理論)_2023年(令和5年) 第5問

難易度・正答率・重要度

  • 難易度:★★☆☆☆(競争地位別戦略の典型問題)
  • 正答率:★★★★☆(正答率70%以上)
  • 重要度:★★★☆☆(基本戦略の理解)

問題文

下表では、ある市場のある年度におけるメーカー企業(企業A~D)の売上高(売上数量と売上金額)が示されている。「競争地位別戦略」に基づいた、各社のとる戦略に関する記述として、最も適切なものを下記の解答群から選べ。


企業A 企業B 企業C 企業D 市場全体
売上数量 300 万個 50 万個 150 万個 500 万個 1,000 万個
売上金額 300 億円 75 億円 105 億円 600 億円 1,080 億円

〔解答群〕
ア 企業Aは、数量シェアを増加させるために、積極的に価格を下げる。
イ 企業Bは、製品単価が最も高く市場拡大の利益が大きいため、市場全体の拡大を第一に目指す。
ウ 企業Cは、製造コストを上げて製品品質を高めながら、競合からの顧客獲得を狙う。
エ 企業Dは、最大のシェアを維持するためには、他社の行動に対して同質化を行うだけでなく、自社からのイノベーションも検討する。

出典:中小企業診断協会|2023年度 第1次試験問題|企業経営理論(PDF)


解答

正解:エ


解説

ア:×
 企業Aは数量シェア30%でチャレンジャーの位置づけ。価格を下げてシェア拡大を狙う戦略は一つの選択肢だが、必ずしも積極的値下げが正解ではない。

イ:×
 企業Bはシェア5%のニッチャー。市場全体の拡大を第一に目指すのはリーダーの戦略であり、適切ではない。

ウ:×
 企業Cはシェア15%のフォロワー。コストを上げて品質を高める戦略は非効率であり、差別化の方向性としても不適切。

エ:〇
 企業Dはシェア50%超のリーダー。リーダーは市場全体の拡大や同質化対応に加え、自らイノベーションを仕掛けることで地位を維持する必要がある。


学習のポイント

競争地位別戦略の基本
 リーダー(最大シェア)、チャレンジャー(2位前後)、フォロワー(中堅)、ニッチャー(小規模特化)の4類型を理解する

リーダーの戦略
 市場拡大、同質化対応、イノベーションによる主導権維持が重要

チャレンジャーの戦略
 差別化や価格競争でリーダーに挑戦し、シェア拡大を狙う

フォロワーの戦略
 模倣やコスト効率を重視し、安定的に市場に追随する

ニッチャーの戦略
 特定市場に集中し、専門性や独自性で収益を確保する