難易度・正答率・重要度
- 難易度:★★☆☆☆(SECIの基本理解)
- 正答率:★★★★☆(正答率70%以上)
- 重要度:★★★☆☆(知識創造の枠組み)
問題文
野中郁次郎が提唱した組織的知識創造理論における中核的な概念の1つである暗黙知に関する記述として、最も適切なものはどれか。
ア
ある時代や分野において支配的規範となる物の見方や捉え方であるパラダイムは、手法的技能としての暗黙知である。
イ
暗黙知は言語化が困難な主観的知識を意味し、そのまま組織的に共有させることが容易である。
ウ
経験は意識的な分析や言語化によっても促進されるため、暗黙知が形式知化されると新たな暗黙知を醸成する。
エ
知識創造の過程は暗黙知と形式知の相互変換であり、集団における暗黙知の共有や一致が知識創造の唯一の出発点である。
オ
豊かな暗黙知の醸成には、経験を積み重ねることが重要で、形式知化を行わないことが推奨される。
出典:中小企業診断協会|2023年度 第1次試験問題|企業経営理論(PDF)
解答
正解:ウ
解説
ア:×
パラダイムは世界観・認識枠組みであり「手法的技能(テクニック)」とは異なる。暗黙知の一部に心的モデルは含まれるが、記述の特定は不適切。
イ:×
暗黙知は言語化困難で「そのままの共有」は難しい。共有には共同体験・徒弟制度・対話などの社会化が必要。
ウ:〇
暗黙知の外化(形式知化)→内化(再び暗黙知へ)というSECIの知識創造スパイラルに合致。分析・言語化が新たな行動知を育む。
エ:×
知識創造は社会化・外化・結合・内化の循環で始点は一つに限られない。「唯一の出発点」は誤り。
オ:×
暗黙知の醸成に経験は重要だが、外化を避けると組織学習が進まず創造が止まる。形式知化は推奨される。
学習のポイント
・SECIモデルの全体像
社会化(暗黙→暗黙)/外化(暗黙→形式)/結合(形式→形式)/内化(形式→暗黙)の循環を押さえる。
・暗黙知共有の実務
共同作業・現場ローテ・メンタリング・物語化などで暗黙知を流通させる。
・外化のコツ
メタファ・アナロジー・図式化・プロトタイピングで非言語要素を形式知へ橋渡し。
・試験での見抜き方
「唯一」「容易」「禁止」などの強い断定は要注意。SECIは多様な起点と往還が前提。