過去問解説(企業経営理論)_2023年(令和5年) 第13問

難易度・正答率・重要度

  • 難易度:★★☆☆☆(CSR理論の基本)
  • 正答率:★★★★☆(正答率70%以上)
  • 重要度:★★★☆☆(経営倫理・CSRの基礎)

問題文

企業の社会的責任に関する記述として、最も適切なものはどれか。


A. キャロルの社会的責任ピラミッドのフレームワークでは、社会貢献責任をピラミッドの土台に、経済的責任を最上部を形成するものと位置づけた。
M. フリードマンによると、企業の社会的責任とは株主利益の最大化であるが、彼の企業の社会的責任論は、法律や社会規範を遵守した上での競争を行うというルールを前提としたものである。
P. ドラッカーによると、20世紀初頭までの経営者に企業経営における社会的責任を意識した者はいなかったので、企業の社会的責任は現代の経営者の持つべき新しい課題であるとした。
企業の社会的責任に関し、R. フリーマンは、企業とステークホルダーは利害を巡って決定的な対立関係にあることを指摘し、両者の相互依存的関係を危険視する主張を展開した。

出典:中小企業診断協会|2023年度 第1次試験問題|企業経営理論(PDF)


解答

正解:イ


解説

ア:×
 キャロルのCSRピラミッドは「経済的責任」を土台に、その上に「法的責任」「倫理的責任」「慈善的責任(社会貢献)」を積み上げる構造。記述は逆転している。

イ:〇
 フリードマンは「企業の社会的責任は株主利益の最大化」と主張。ただし無制限ではなく、法律や社会規範を遵守した上での競争を前提としている。

ウ:×
 ドラッカーはCSRを「社会的責任を経営のコストではなく機会として捉えるべき」と論じた。20世紀初頭にCSR意識が皆無だったとするのは誤り。

エ:×
 フリーマンのステークホルダー理論は、利害関係者との「相互依存」を重視し、対立関係を危険視するのではなく協働を強調する。


学習のポイント

キャロルのCSRピラミッド
 経済的責任(基盤)→法的責任→倫理的責任→慈善的責任の4層構造。

フリードマンのCSR論
 株主利益最大化を主張するが、法令遵守・社会規範の枠内での活動を前提とする。

ドラッカーの視点
 CSRを「社会的課題を解決する新しい機会」と捉え、経営の本質的役割と結びつけた。

フリーマンのステークホルダー理論
 株主だけでなく従業員・顧客・地域社会など多様な利害関係者との協働を重視。

試験対策のコツ
 「逆転」「容易」「唯一」「危険視」など極端な表現は誤答のサインになりやすい。