過去問解説(企業経営理論)_2023年(令和5年) 第14問

難易度・正答率・重要度

  • 難易度:★★☆☆☆(組織形態の特徴整理)
  • 正答率:★★★★☆(正答率70%以上)
  • 重要度:★★★☆☆(組織論の基礎)

問題文

主要な組織形態に関する記述として、最も適切なものはどれか。


機能別組織では、機能別部門の管理をそれぞれの部門の長に任せることから、事業部制組織よりも次世代経営者の育成を行いやすい。
機能別組織では、知識の蓄積が容易であるため、事業の内容や範囲にかかわらず経営者は意思決定を迅速に行いやすい。
事業部制組織では、各事業部が自律的に判断できるために、事業部間で重複する投資が生じやすい。
事業部制組織では、各事業部が素早く有機的に連携できるため、機能別組織よりも事業横断的なシナジーを創出しやすい。
マトリックス組織は、複数の命令系統があることで組織運営が難しいため、不確実性が低い環境において採用されやすい。

出典:中小企業診断協会|2023年度 第1次試験問題|企業経営理論(PDF)


解答

正解:ウ


解説

ア:×
 機能別組織は専門性を高めやすいが、経営全体を俯瞰する経験が得にくく、次世代経営者の育成には不向き。事業部制の方が経営者育成に適している。

イ:×
 機能別組織は知識蓄積には有利だが、部門間調整が必要で意思決定はむしろ遅くなりやすい。

ウ:〇
 事業部制組織は各事業部が独立採算で自律的に判断できるため、同様の投資や機能が重複するリスクがある。典型的なデメリット。

エ:×
 事業部制は事業ごとに独立性が高いため、横断的なシナジーはむしろ生みにくい。シナジー創出は機能別組織やマトリックス組織の方が得意。

オ:×
 マトリックス組織は不確実性が高い環境で柔軟性を発揮するために採用される。低不確実性環境では不要。


学習のポイント

機能別組織
 専門性・効率性に優れるが、全社的視点やスピード感に欠ける。

事業部制組織
 環境変化に即応できるが、投資や機能の重複が生じやすい。経営者育成には有利。

マトリックス組織
 複数の命令系統で柔軟性を確保。不確実性が高い環境で有効だが、権限調整が難しい。

試験対策のコツ
 「容易」「唯一」「必ず」などの断定表現は誤答の可能性が高い。各組織形態のメリット・デメリットを対比で整理する。