過去問解説(企業経営理論)_2023年(令和5年) 第19問

難易度・正答率・重要度

  • 難易度:★★☆☆☆(集団行動の基本概念)
  • 正答率:★★★★☆(正答率70%以上)
  • 重要度:★★★☆☆(組織心理の基礎)

問題文

集団の中にいる人間の意思決定や行動は集団から影響を受ける。集団の機能と集団内の人間行動に関する記述として、最も適切なものはどれか。


「凝集性」が高い集団では、集団内の規範と組織全体の業績目標とが一致するため、集団内の個人の生産性が高まりやすい。
「グループシフト」とは、集団のメンバーが個人として当初有していた極端な態度や意見が、集団で討議した結果、より中立的な方向に収束する現象を指す。
「集団圧力」を受けやすい状況下でも、正しい答えが明白な課題に取り組む場合は、個人が多数派の意見に同調して誤った答えを選択することはない。
全体の和を重んじる集団では、意思決定に際して多数派の意見だけではなく少数派からの異論も奨励する「グループシンク」が促進されやすい。
人が集団の中で働くときに単独で働くときほど努力しない「社会的手抜き」という現象は、個人の貢献と集団の成果との関係が曖昧な場合に生じやすい。

出典:中小企業診断協会|2023年度 第1次試験問題|企業経営理論(PDF)


解答

正解:オ


解説

ア:×
 凝集性が高い集団は規範への同調が強まりやすいが、その規範が組織目標と不一致なら生産性が下がることもある。「一致するために生産性が高まる」とは限らない。

イ:×
 グループシフトは討議後に態度が「より極端化(リスキーシフト/保守化)」する現象。中立に収束するという説明は誤り。

ウ:×
 アッシュの同調実験が示すように、正答が明白でも集団圧力で誤答に同調することがある。「ない」と断定するのは誤り。

エ:×
 「グループシンク(集団浅慮)」は和や一致を過度に重視することで異論が抑圧される状態。少数派異論は奨励されず、むしろ排除されやすい。

オ:〇
 社会的手抜きは、個人貢献が識別されにくい・成果との関係が曖昧・責任の拡散が起こる状況で生じやすい。可視化や責任の明確化で緩和できる。


学習のポイント

凝集性の二面性
 一致すれば高業績につながるが、不一致なら逆効果となる。規範の方向性が重要。

グループシフト
 討議によって態度が中立化するのではなく、むしろ極端化する傾向がある。

グループシンクの兆候
 異論の抑制、過信、情報の選別など。防止にはデビルズアドボケイトや外部意見の導入が有効。

社会的手抜きの対策
 個人の貢献を可視化する、役割を明確化する、少人数化するなどで発生を抑制できる。