過去問解説(企業経営理論)_2023年(令和5年) 第24問

難易度・正答率・重要度

  • 難易度:★★☆☆☆(労働法の基本事項)
  • 正答率:★★★★☆(正答率70%以上)
  • 重要度:★★★☆☆(賃金支払の原則)

問題文

賃金又は退職金に関する記述として、最も適切なものはどれか。


従業員の業務実績に応じて、一定比率を賃金とする出来高払制度によって賃金計算をする労働契約を締結している場合には、使用者は、労働時間に応じた一定額の賃金保障をする必要がなくなる。
使用者は、最低賃金法による最低賃金の適用を受ける労働者に対し、その最低賃金額以上の賃金を支払わなければならず、同法には、この最低賃金支払義務に違反した者に対して罰金に処する旨の規定が設けられている。
懲戒解雇の場合には、使用者は、労働基準法の規定により退職金として、懲戒解雇等の理由がない場合に支払われるべき額の6割を支払わなければならない。
労働基準法により賃金は毎月一回以上一定の期日を定めて支払うこととされているため、従業員が疾病治療の費用に充てるために既往の労働に対する賃金を請求した場合であっても、使用者は、あらかじめ定めた支払期日前に当該賃金を支払わなくてよい。

出典:中小企業診断協会|2023年度 第1次試験問題|企業経営理論(PDF)


解答

正解:イ


解説

ア:×
出来高払でも最低賃金の適用を受けるため、労働時間に応じた最低賃金額を下回ることは許されない。賃金保障が不要になるわけではない。

イ:〇
最低賃金法は最低賃金以上の支払いを義務付け、違反には罰金の規定がある。適切な記述。

ウ:×
退職金支払いの有無・割合は就業規則等の定めによるもので、労働基準法に「6割支払い」の規定はない。

エ:×
賃金の支払期日は「毎月1回以上一定期日」を定める原則だが、期日前支払いを禁止する趣旨ではない。前払い・一部支払いは可能。


学習のポイント

最低賃金の適用
出来高払でも時間当たりの賃金が最低賃金を下回ってはならない。

罰則の存在
最低賃金法違反には罰金の規定がある。遵守は法的義務。

退職金の法的位置づけ
退職金は労基法の義務ではなく、企業の規程に基づく。割合の法定はない。

賃金支払期日の原則
「毎月1回以上・一定期日」は原則。早払いの禁止ではない点に注意。