難易度・正答率・重要度
- 難易度: ★★★☆☆(サステイナビリティとマーケティング)
- 正答率: ★★★☆☆(正答率50〜70%)
- 重要度: ★★★★☆(現代マーケティングの必須知識)
問題文
次の文章を読んで、下記の設問に答えよ。
持続可能な社会実現への要請が強まるなか、企業には、①利益と社会的責任を両立させるマーケティングを検討するだけでなく、消費者に②サステイナブルな消費行動を促す努力も求められている。
(設問1)
文中の下線部①に関する記述として、最も適切なものはどれか。
(設問2)
文中の下線部②に関する記述として、最も適切なものはどれか。
出典: 中小企業診断協会|2023年度 第1次試験問題|企業経営理論(PDF)
解答
- 設問1:ア
- 設問2:ア
解説(設問1)
ア:〇
CSV(Creating Shared Value)は、CSRよりも「社会的課題を事業活動と結びつけ、本業の利益に還元する」ことを重視する概念。ポーターが提唱し、CSRの枠を超えて社会課題解決と利益創出を両立させる点が特徴。
イ:×
SDGs経営は経済的利益を否定するものではなく、社会的課題解決と利益追求を両立させることを目指す。
ウ:×
「ソーシャル・グッド」は一般に社会的に良い取り組み全般を指す言葉であり、本業利益への還元を強調する用語ではない。
エ:×
売上の一部を社会課題に寄付する活動は「コーズ・リレーテッド・マーケティング」と呼ばれる。メセナは文化・芸術支援活動を指す。
オ:×
ソサイエタル・マーケティングは「社会全体の幸福を考慮したマーケティング」だが、コトラーのマーケティング4.0とは別概念。
解説(設問2)
ア:〇
サステイナブル消費に関しては「態度と行動のギャップ(Attitude-Behavior Gap)」が存在する。多くの消費者は理念に賛同するが、実際の行動には結びつきにくい。
イ:×
サステイナブル消費を促すには「所有」よりも「使用・体験価値」を重視する方が有効。シェアリングエコノミーなどが代表例。
ウ:×
環境配慮型の購買行動は「グリーン・コンシューマー」と呼ばれるが、「ソーシャリズム」という用語は誤り。
エ:×
レジ袋有料化のような施策は、環境配慮行動を促す一方で「負担増」と受け止められ、反発や不満を招くこともある。必ずしも支持されやすいわけではない。
学習のポイント
- CSVとCSRの違い
CSRは「社会的責任を果たす」活動全般を指すが、CSVは「社会課題の解決を本業と結びつけ、利益創出と両立させる」点が特徴。 - コーズ・リレーテッド・マーケティングとメセナ
売上の一部を寄付する活動はコーズ・リレーテッド・マーケティング。
メセナは文化・芸術支援活動を指す。用語の混同に注意。 - ソサイエタル・マーケティング
顧客満足と社会全体の幸福を両立させるマーケティング。マーケティング4.0とは別概念。 - 態度と行動のギャップ
サステイナブルな社会に賛同する態度はあっても、実際の購買行動に結びつかない現象。グリーン・マーケティングの難しさの一因。 - 消費者行動を促す工夫
・所有価値より使用価値を重視させる(シェアリングエコノミーなど)。
・小さな行動変容を積み重ねる「ナッジ」の活用。
・価格転嫁型施策(例:レジ袋有料化)は反発リスクがあるため、説明責任や代替手段の提示が重要。