過去問解説(経営法務)_2024年(R6年) 第7問

難易度・正答率・重要度

  • 難易度:★★★★☆(応用的な推論や制度比較が必要)
  • 正答率:★★☆☆☆(正答率30〜50%。やや難しい)
  • 重要度:★★★★☆(頻出論点。制度理解に直結)

問題文

以下の会話は、X株式会社(以下「X社」という。)の株主兼代表取締役である甲氏と、中小企業診断士であるあなたとの間で行われたものである。この会話を読んで、下記の設問に答えよ。
なお、X社は種類株式発行会社ではなく、定款に特段の定めはない。また、X社とY株式会社(以下「Y社」という。)との間に資本関係はない。

※会話文省略(詳細は問題文参照)

(設問1)
会話の中の空欄AとBに入る語句の組み合わせとして、最も適切なものはどれか。

A:総株主の議決権 B:5分の4
A:総株主の議決権 B:10分の9
A:発行済株式総数 B:3分の2
A:発行済株式総数 B:10分の9

(設問2)
会話の中の空欄CとDに入る語句の組み合わせとして、最も適切なものはどれか。

C:債権者異議手続が必要となります D:いかなる場合でも株式買取請求権は認められていません
C:債権者異議手続が必要となります D:株式買取請求権が認められていますが、事業譲渡の承認決議と同時に解散の決議をする場合には、株式買取請求権は発生しません
C:債権者異議手続は不要です D:いかなる場合でも株式買取請求権は認められていません
C:債権者異議手続は不要です D:株式買取請求権が認められていますが、事業譲渡の承認決議と同時に解散の決議をする場合には、株式買取請求権は発生しません

出典:中小企業診断協会|2024年度 第1次試験問題|経営法務(PDF)

解答

  • 設問1:エ
  • 設問2:エ

解説

【設問1】
ア:✕
 特別支配株主による株式売渡請求の要件は「発行済株式総数の10分の9以上」であり、5分の4では足りない。

イ:✕
 「総株主の議決権」ではなく「発行済株式総数」が基準となる。

ウ:✕
 3分の2では特別支配株主に該当しない。

エ:〇
 「発行済株式総数の10分の9以上」を保有していれば、特別支配株主として株式売渡請求が可能。

【設問2】
ア:✕
 事業譲渡においては、一定の要件を満たす場合に株式買取請求権が認められる。

イ:✕
 債権者異議手続は不要であるため誤り。

ウ:✕
 株式買取請求権は一定の条件下で認められるため、「いかなる場合でも認められない」という記述は誤り。

エ:〇
 事業譲渡においては、債権者異議手続は不要であり、反対株主には株式買取請求権が認められる。ただし、事業譲渡と同時に解散決議をする場合には、買取請求権は発生しない。


学習のポイント

  • 特別支配株主による株式売渡請求制度は、事業承継やM&Aにおいて重要な制度。
  • 事業譲渡に関する手続きでは、債権者異議手続や株式買取請求権の有無が論点となる。
  • 空欄補充型の問題では、制度の要件を正確に理解しておく必要がある。