難易度・正答率・重要度
- 難易度:★★★★☆(応用的な推論や制度比較が必要)
- 正答率:★★☆☆☆(正答率30〜50%。やや難しい)
- 重要度:★★★★☆(頻出論点。制度理解に直結)
問題文
以下の会話は、X株式会社(以下「X社」という。)の株主兼代表取締役である甲氏と、中小企業診断士であるあなたとの間で行われたものである。この会話を読んで、下記の設問に答えよ。
なお、X社は種類株式発行会社ではなく、定款に特段の定めはない。また、X社とY株式会社(以下「Y社」という。)との間に資本関係はない。
甲氏:
私も今年で70歳を超え、X社の経営をしていくのが大変になってきたので、X社の経営を他の人に譲ろうと思っています。知人に聞いたところ、Y社が、X社の事業に興味を持っているということで、X社の株式を買ってもよいということでした。X社の株式をY社に売却するに当たって、どのようなことを準備しておくとよいのでしょうか。
あなた:
他人の名義を用いて株式の引き受けや取得をしていた場合には、その名義株主と実質的な株主との間で、株主がどちらであるかということが争いになる場合があります。このため、もし、そのような事情がある場合には、実質的な株主と名義株主との間で合意書を締結し、株主がどちらであるのかを確認しておくことが必要です。
甲氏:
分かりました。X社の株式は、私の他に株主名簿に記載された人が出資をして株式を引き受けていますので、名義株主はいなかったと思いますが、改めて確認します。ところで、X社の株式は、私が大半を持っていますが、それ以外にも株主がいます。Y社に株式を譲渡するにあたって、私以外の株主の大部分はY社に株式を譲渡することに同意してもらえますが、一部の株主はY社への株式譲渡に応じない可能性があります。Y社にX社の株式の全部を譲渡するために何か方法はありますか。
あなた:
甲氏は、X社の株式をどれくらい持っているのでしょうか。
甲氏:
私は、X社の A の B 以上を持っています。
あなた:
そうであれば、甲氏は、X社の特別支配株主になりますので、X社の株主の全員に対し、その有するX社の株式の全部を自分に売り渡すことを請求することができ、所定の手続をとることにより、甲氏が、X社の株式の全部を取得することができます。そのうえで、Y社に株式を譲渡することが考えられます。
甲氏:
分かりました。ところで、X社の株式をY社に譲渡する以外の方法で、Y社にX社の事業を引き継ぐ方法はありますか。
あなた:
例えば、X社の事業の全部をY社に事業譲渡する方法や、Y社がX社を吸収合併する方法があります。
甲氏:
事業の全部をY社に事業譲渡する場合、X社では、どのような手続きが必要となるのでしょうか。
あなた:
その場合は、原則として、X社で株主総会の特別決議が必要になります。
甲氏:
知人からは、会社法では、債権者異議手続や反対する株主から株式を買い取る手続きが定められていると聞いたのですが、この点はどうでしょうか。
あなた:
ご質問の事業を全部譲渡する場合、X社において、C。X社の反対株主には、D。
(設問1)
会話の中の空欄AとBに入る語句の組み合わせとして、最も適切なものはどれか。
ア
A:総株主の議決権 / B:5分の4
イ
A:総株主の議決権 / B:10分の9
ウ
A:発行済株式総数 / B:3分の2
エ
A:発行済株式総数 / B:5分の4
(設問2)
会話の中の空欄CとDに入る語句の組み合わせとして、最も適切なものはどれか。
ア
C:債権者異議手続が必要となります / D:いかなる場合でも株式買取請求権は認められていません
イ
C:債権者異議手続が必要となります / D:株式買取請求権が認められていますが、事業譲渡の承認決議と同時に解散の決議をする場合には発生しません
ウ
C:債権者異議手続は不要です / D:いかなる場合でも株式買取請求権は認められていません
エ
C:債権者異議手続は不要です / D:株式買取請求権が認められていますが、事業譲渡の承認決議と同時に解散の決議をする場合には発生しません
出典:中小企業診断協会|2024年度 第1次試験問題|経営法務(PDF)
解答
- 設問1:エ
- 設問2:エ
解説
【設問1】
ア:✕
特別支配株主による株式売渡請求の要件は「発行済株式総数の10分の9以上」であり、5分の4では足りない。
イ:✕
「総株主の議決権」ではなく「発行済株式総数」が基準となる。
ウ:✕
3分の2では特別支配株主に該当しない。
エ:〇
「発行済株式総数の10分の9以上」を保有していれば、特別支配株主として株式売渡請求が可能。
【設問2】
ア:✕
事業譲渡においては、一定の要件を満たす場合に株式買取請求権が認められる。
イ:✕
債権者異議手続は不要であるため誤り。
ウ:✕
株式買取請求権は一定の条件下で認められるため、「いかなる場合でも認められない」という記述は誤り。
エ:〇
事業譲渡においては、債権者異議手続は不要であり、反対株主には株式買取請求権が認められる。ただし、事業譲渡と同時に解散決議をする場合には、買取請求権は発生しない。
学習のポイント
- 特別支配株主による株式売渡請求制度は、事業承継やM&Aにおいて重要な制度。
- 事業譲渡に関する手続きでは、債権者異議手続や株式買取請求権の有無が論点となる。
- 空欄補充型の問題では、制度の要件を正確に理解しておく必要がある。