難易度・正答率・重要度
- 難易度:★★★☆☆(複数知識の統合や、誤答肢の吟味が必要)
- 正答率:★★★☆☆(正答率50〜70%。標準的な難易度)
- 重要度:★★★★☆(頻出論点。制度理解に直結)
問題文
会社法が定める株式の併合と株式の分割に関する記述として、最も適切なものはどれか。
なお、本問における株式会社は取締役会設置会社であり、種類株式発行会社ではないものとする。
ア
株式の併合および株式の分割を行う場合、いずれも、株主総会の特別決議による承認が必要となる。
イ
株式の併合には反対株主の株式買取請求権が定められているが、株式の分割には反対株主の株式買取請求権は定められていない。
ウ
発行可能株式総数が100株であって、発行済株式総数が50株の株式会社が、1株を10株とする株式の分割をする場合において、発行可能株式総数を600株とするときの定款変更は、必ず株主総会決議の承認を得なければならない。
エ
発行可能株式総数が900株、発行済株式総数が300株の株式会社が、2株を1株に株式併合する場合、当該会社が公開会社であっても、効力発生日における発行可能株式総数を変更する必要はない。
出典:中小企業診断協会|2024年度 第1次試験問題|経営法務(PDF)
解答
正解:イ
解説
ア:✕
株式の分割は取締役会決議で実施可能であり、株主総会の特別決議は不要。併合は株主総会の特別決議が必要であるため、両者を同列に扱う記述は誤り。
イ:〇
株式の併合には、株主の持株比率が変動する可能性があるため、反対株主に株式買取請求権が認められている。一方、株式の分割では持株比率に影響がないため、買取請求権は認められていない。
ウ:✕
株式分割に伴う発行可能株式総数の変更は定款変更に該当するが、株式分割自体は取締役会決議で可能。定款変更には株主総会の普通決議が必要であり、「必ず承認を得なければならない」という表現は誤解を招く。
エ:✕
株式併合により発行済株式数が減少する場合、発行可能株式総数が相対的に過剰となる可能性があるため、効力発生日における発行可能株式総数の変更が必要となる場合がある。変更不要と断定する記述は誤り。
学習のポイント
- 株式の分割と併合は、手続・影響・株主保護の観点で異なる制度である。
- 株式併合は株主の持株比率に影響を与えるため、株主保護措置(買取請求権)が設けられている。
- 分割は株数が増えるだけで持株比率に影響がないため、買取請求権は不要。
- 定款変更を伴う場合は、株主総会決議の要否を正確に整理すること。