過去問解説(経営法務)_2024年(R6年) 第21問

難易度・正答率・重要度

  • 難易度:★★☆☆☆(基本知識の組み合わせ。やや思考を要する。)
  • 正答率:★★★★☆(正答率70〜90%。比較的易しい。)
  • 重要度:★★★★☆(頻出論点。制度理解に直結。)

問題文

売買契約における手付に関する記述として、最も適切なものはどれか。

手付が違約手付の趣旨で交付された場合、証約手付の性質はない。
手付が解約手付の効力を有する場合、売主は、買主に対し、口頭により手付の倍額を償還する旨を告げその受領を催告することにより、売買契約を解除することができる。
手付が解約手付の効力を有する場合、買主はその手付を放棄し、契約の解除をすることができるが、売主が契約の履行に着手した後は、この限りでない。
手付が損害賠償額の予定としての効力を有する場合、解約手付の効力を有することはない。

出典:中小企業診断協会|2024年度 第1次試験問題|経営法務(PDF)


解答

正解:ウ


解説

ア:✕
 手付は、特約がない限り「証約手付」としての性質を持つのが原則であり、違約手付として交付された場合でも証約手付の性質を併せ持つことがある。「証約手付の性質はない」と断定するのは誤り。

イ:✕
 解約手付による解除は、原則として手付の倍返し(売主)または放棄(買主)によるが、解除の意思表示は口頭でも可能であるものの、実務上は手付金の現実の提供または返還が必要とされる。単に口頭で告げ催告するだけでは足りない。

ウ:〇
 解約手付の効力により、買主は手付放棄で解除できるが、売主が履行に着手した後は解除できない。この「履行の着手」制限は民法に明文規定がある。

エ:✕
 手付が損害賠償額の予定としての効力を有する場合でも、当事者の合意によって解約手付の効力を併せ持たせることは可能である。「有することはない」とするのは誤り。


学習のポイント

  • 手付の種類
  • 証約手付:契約成立の証拠
  • 解約手付:手付放棄または倍返しで解除可能(履行着手前まで)
  • 違約手付:債務不履行時の損害賠償額の予定
  • 履行の着手
  • 実際の履行行為(目的物の引渡し準備や代金支払行為など)を開始した時点で、解約手付による解除は不可。
  • 併存可能性
  • 手付は複数の性質を併せ持つことがあり、特約で効力を組み合わせることも可能。