過去問解説(経営法務)_2024年(R6年) 第24問

難易度・正答率・重要度

  • 難易度:★★☆☆☆(基本知識の組み合わせ。やや思考を要する。)
  • 正答率:★★★★☆(正答率70〜90%。比較的易しい。)
  • 重要度:★★★★☆(頻出論点。制度理解に直結。)

問題文

民法上の不法行為に関する記述として、最も適切なものはどれか。

慰謝料請求権は、身体または自由が侵害された場合には認められるが、財産権または名誉が侵害された場合には認められない。
被用者が使用者の事業の執行について第三者に損害を加えた場合において、使用者が当該第三者に対して使用者責任を負うときは、被用者は当該第三者に対して不法行為責任を負わない。
不法行為に基づく損害賠償債務は、被害者による催告を要することなく、当然に遅滞に陥る。
不法行為に基づく損害賠償請求権は、不法行為の時から10年間行使しないときは、時効によって消滅する。

出典:中小企業診断協会|2024年度 第1次試験問題|経営法務(PDF)


解答

正解:ウ


解説

ア:✕
 慰謝料請求権は、身体・自由の侵害だけでなく、財産権や名誉の侵害についても認められる場合がある。したがって本肢は誤り。

イ:✕
 使用者責任は被用者の責任を免除するものではなく、被用者も加害者として不法行為責任を負う。よって「負わない」とする本肢は誤り。

ウ:〇
 不法行為による損害賠償債務は、発生時点で履行遅滞に陥る(催告不要の遅滞)。これは不法行為が債務不履行と異なり、発生時から履行期が到来しているとみなされるため。

エ:✕
 不法行為の消滅時効は、原則として「損害および加害者を知った時から3年」、または「不法行為の時から20年」である。10年という規定は存在しない。


学習のポイント

  • 不法行為の損害賠償債務は、発生時から履行期が到来しているため、催告不要で遅滞に陥る。
  • 使用者責任は被用者の責任を免除しない。両者は連帯して責任を負う。
  • 慰謝料は財産権侵害や名誉侵害でも認められる場合がある。
  • 消滅時効は「知った時から3年」「行為時から20年」が原則(改正民法後も同様)。