過去問解説(企業経営理論)_2024年(令和6年) 第1問

難易度・正答率・重要度

  • 難易度:★★★☆☆(複数知識の統合や、誤答肢の吟味が必要)
  • 正答率:★★★☆☆(正答率50〜70%。標準的な難易度)
  • 重要度:★★★★☆(頻出論点。制度理解に直結)

問題文

H. ミンツバーグによって提唱された創発的戦略に関する記述として、最も適切なものはどれか。


創発的戦略とは、「意図された戦略」を「計画された戦略」に落とし込むための方策を表した概念である。
創発的戦略とは、新たな事業ドメインをつくり出すための戦略と定義される。
創発的戦略とは、企業が新たな市場・製品分野に進出する際、シナジー効果の創出を意図する戦略である。
創発的戦略とは、組織形態が戦略の選択肢を狭めるという、戦略策定過程の性質を表した概念である。
創発的戦略とは、もともとの経営計画には組み込まれておらず偶発的に起こった事象に対応することで、事後的に生み出される戦略のことである。

出典:中小企業診断協会|2024年度 第1次試験問題|企業経営理論(PDF)


解答

正解:オ


解説

ア:✕
 「意図された戦略」を「計画された戦略」に落とし込むのは、戦略の実行や計画化のプロセスに関する説明であり、創発的戦略の定義ではない。

イ:✕
 新たな事業ドメインをつくり出す戦略は「多角化戦略」や「成長戦略」に近い概念であり、創発的戦略の定義とは異なる。

ウ:✕
 シナジー効果を意図する戦略は「関連多角化戦略」などの説明であり、創発的戦略の定義ではない。

エ:✕
 組織形態が戦略の選択肢を制約するという考え方は「組織構造と戦略の関係性」に関する議論であり、創発的戦略の定義ではない。

オ:〇
 創発的戦略(Emergent Strategy)は、H. ミンツバーグが提唱した概念で、当初の計画には含まれていなかったが、偶発的な出来事や環境変化に対応する中で事後的に形成される戦略を指す。計画的戦略(Deliberate Strategy)と対比される重要な概念である。


学習のポイント

  • ミンツバーグは戦略を「意図された戦略(Deliberate Strategy)」と「創発的戦略(Emergent Strategy)」に区分。
  • 創発的戦略は、環境変化や偶発的事象に対応する中で生まれる「後付けの戦略」。
  • 計画的戦略と創発的戦略の両方が、実際の企業戦略形成において重要な役割を果たす。
  • 戦略論の基礎概念として頻出であり、特に「計画 vs 創発」の対比を理解しておくことが重要。