過去問解説(企業経営理論)_2024年(令和6年) 第3問

難易度・正答率・重要度

  • 難易度:★★★☆☆(複数知識の統合や誤答肢の吟味が必要)
  • 正答率:★★★☆☆(正答率50〜70%。標準的な難易度)
  • 重要度:★★★★☆(頻出論点)

問題文

ある企業では4つの事業を展開している。以下は、各事業(①~④)の事業内容とある年度における売上高である。製品Aと製品B、部品Cは技術的に関連しているものとする。

① 製品A事業:960 億円

② 製品B事業:10 億円

③ 部品C(製品Aの原材料の1つ)事業:20 億円

④ 不動産事業:10 億円

R. ルメルトの多角化の分類に基づいたこの企業の多角化の程度として、最も適切なものを下記の解答群から選べ。

なお、この多角化の分類では、多角化企業は以下の基準で分類されるものとする。

  • 専門化率が95%以上のものは単一事業企業
  • 専門化率が95%未満で垂直率が70%以上のものは垂直的主力事業企業
  • 専門化率と垂直率が70%未満で関連率が70%以上のものは関連事業企業
  • 専門化率と垂直率、関連率のいずれもが70%未満のものは非関連事業企業

〔解答群〕

関連事業企業
垂直的主力事業企業
単一事業企業
非関連事業企業

出典:中小企業診断協会|2024年度 第1次試験問題|企業経営理論(PDF)


解答

正解:ウ


解説

ア:✕
 関連事業企業とするには、関連率が70%以上である必要がある。本問では製品Aが圧倒的に大きく、関連率の基準を満たさない。

イ:✕
 垂直的主力事業企業とするには、専門化率が95%未満かつ垂直率が70%以上である必要がある。本問では専門化率が95%を超えているため該当しない。

ウ:〇
 製品A事業の売上は960億円で、全体の売上(1000億円)の96%を占める。専門化率が95%以上であるため、この企業は「単一事業企業」に分類される。

エ:✕
 非関連事業企業とするには、専門化率・垂直率・関連率のいずれも70%未満である必要がある。本問は専門化率が96%であり、条件を満たさない。


学習のポイント

  • ルメルトの多角化分類は「専門化率」「垂直率」「関連率」の3つの指標で判断する。
  • 専門化率=最大事業の売上比率。本問では製品Aが96%を占めるため「単一事業企業」。
  • 誤答肢は「関連率」「垂直率」の条件を混同させる典型的なパターン。
  • 実務的にも、売上の大半を1事業に依存する企業はリスクが高く、戦略的に多角化の必要性が議論される。