過去問解説(企業経営理論)_2024年(令和6年) 第4問

難易度・正答率・重要度

  • 難易度:★★★☆☆(複数知識の統合や誤答肢の吟味が必要)
  • 正答率:★★★☆☆(正答率50〜70%。標準的な難易度)
  • 重要度:★★★★☆(頻出論点。制度理解に直結)

問題文

以下の表は、企業Xのある年度の各事業の状況を示している。プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント(PPM)の枠組みから示唆される記述として、最も適切なものを下記の解答群から選べ。


事業名 売上高 市場シェア 市場成長率
事業A 300億円 15%(業界3位) 25%
事業B 3,000億円 45%(業界1位) 5%
事業C 200億円 5%(業界5位) 5%
事業D 1,600億円 55%(業界1位) 25%

〔解答群〕

事業Bは、成長余地がないので、できるだけ速やかに事業清算を行う。
事業Dは、市場シェアや競争力の維持のために、事業からの収益を自事業に再投資する。
最も売上高の大きい事業Bから資金を投じ、事業Cを育成する。
最も市場シェアの高い事業Dから技術シナジーを生むための技術供与を行い、事業Aを育成する。
最も市場シェアの高い事業Dから資金を投じ、事業Cを育成する。

出典:中小企業診断協会|2024年度 第1次試験問題|企業経営理論(PDF)


解答

正解:イ


解説

ア:✕
 事業Bは市場成長率が低く市場シェアが高い「金のなる木(Cash Cow)」に該当し、即時清算ではなく収益を他事業へ配分・維持が基本方針である。

イ:〇
 事業Dは市場成長率が高く市場シェアも高い「花形(Star)」であり、競争力維持とシェア拡大のために自事業への再投資が必要である。

ウ:✕
 事業Cは市場成長率も市場シェアも低い「負け犬(Dog)」であり、育成のための投資対象にはなりにくい。資金投下の優先は一般にCash CowからQuestion Markへの配分である。

エ:✕
 PPMの基本方針は資金配分に焦点があり、技術供与の有無は直接の判断基準ではない。加えてStar(事業D)は自事業への再投資が優先される。

オ:✕
 事業CはDogであり、成長見込みが乏しいため、Starからの資金投下対象としては不適切である。


学習のポイント

  • PPMは「市場成長率×相対的市場シェア」で事業を「花形(Star)・金のなる木(Cash Cow)・問題児(Question Mark)・負け犬(Dog)」に分類し、資金配分方針を示す。
  • Starは自事業に再投資、Cash Cowは安定収益を他事業へ配分、Question Markは選択的に投資、Dogは撤退・縮小が原則。
  • 本問では、事業D=Star、事業B=Cash Cow、事業A=Question Mark、事業C=Dogと判断するのが自然。