過去問解説(企業経営理論)_2024年(令和6年) 第11問

難易度・正答率・重要度

  • 難易度:★★★☆☆(誤答肢の吟味が必要)
  • 正答率:★★★☆☆(正答率50〜70%。標準的な難易度)
  • 重要度:★★★☆☆(I-Rフレームワークの基本理解に直結)

問題文

ある企業では、国際化に際して、「自社の事業特性を考え、標準化を最小限に抑えながら、現地適応を最重要視する」という方針を立てた。この方針と合致する、I-Rフレームワークに基づいた経営スタイルに関する記述として、最も適切なものはどれか。


意思決定の権限や経営資源は海外子会社に分散され、親会社は子会社と緩やかにつながる。
親会社が海外子会社を公式的に管理・統制し、子会社間の調整を行うが、日常業務の意思決定の権限や経営資源の多くは海外子会社に分散される。
各海外子会社が密接につながるネットワークとなり、各地での学習成果を企業全体で活用する。
現地化と標準化の両立を図ることの負荷を下げるために、現地企業との戦略的提携体制を整える。
重要な意思決定や経営資源は本国や親会社に集中し、集権的に海外子会社を統制する。

出典:中小企業診断協会|2024年度 第1次試験問題|企業経営理論(PDF)


解答

正解:ア


解説

ア:〇
 標準化を最小限にし現地適応を最重視するのは、I-Rフレームワークで「低グローバル統合・高ローカル適応」に該当するローカル化(マルチナショナル)型。権限・資源の分散と親会社との緩やかな連結が特徴。

イ:✕
 親会社の公式的統制と子会社間調整を強めつつ、業務裁量を分散するのは国際型や一部グローバル型に近く、現地適応最重視・標準化最小限という方針とは一致しない。

ウ:✕
 ネットワークで学習成果を企業全体に拡散するのはトランスナショナル型(高統合・高適応)。本問は統合圧力が低いため不適切。

エ:✕
 戦略的提携の可否は経営スタイルそのものではなく手段の一つ。I-Rの類型を直接示す記述ではない。

オ:✕
 本国集中・集権的統制はグローバル型(高統合・低適応)。現地適応最重視の方針に反する。


学習のポイント

  • I-Rフレームワークは「グローバル統合圧力×ローカル適応圧力」で、グローバル型・マルチナショナル型・トランスナショナル型・国際型のスタイルを整理する。
  • ローカル化(マルチナショナル)型は、権限分散・現地裁量・製品やマーケのローカル設計が中核。標準化は最小限に留める。
  • グローバル型は集権・標準化、トランスナショナル型はネットワーク共有と両立、国際型は本社主導の技術移転中心。方針と各特徴の対応をセットで覚える。