過去問解説(企業経営理論)_2024年(令和6年) 第13問

難易度・正答率・重要度

  • 難易度:★★★☆☆(エフェクチュエーションの理解が必要)
  • 正答率:★★★☆☆(正答率50〜70%。標準的)
  • 重要度:★★★☆☆(起業家論・意思決定論の基礎理解に直結)

問題文

熟達した起業家にみられる意思決定の様式とされるエフェクチュエーションに即した行動に関する記述として、最も不適切なものはどれか。


既存の製品を製造する時に使用していた温水に着眼し、その温水を利用してイチゴのハウス栽培を始めた。
新規店舗を開設する際に、目標店舗数を設定するのではなく、許容できる損失額を重視して、段階的に店舗数を増やしていった。
大災害が起こったことによって大きな被害を受けたが、新聞報道などで被災地に注目が集まったことを利用して、自社製品の広告に力を入れた。
他国で戦争が勃発し、エネルギー価格の変動が見込まれるため、過去20年分のデータを精査して、来年度の利益目標を立てた。
発売した新製品に対してある顧客からクレームを受けたが、その顧客に製品改良のための活動に参加してもらい、製品の品質向上を図った。

出典: 中小企業診断協会|2024年度 第1次試験問題|企業経営理論(PDF)


解答

正解:エ


解説

ア:〇
 既存資源(温水)を新用途(イチゴ栽培)に活用するのは「手中の鳥の原則」に基づく典型的なエフェクチュエーション。

イ:〇
 「許容可能な損失の原則」に基づき、リスクを限定しながら段階的に拡大する行動はエフェクチュエーションに合致する。

ウ:〇
 外部環境の偶発性(大災害による注目)を利用して機会に変えるのは「レモネードの原則」に該当する。

エ:✕
 過去データを精査し、将来の利益目標を立てるのは「予測に基づく計画的アプローチ」であり、エフェクチュエーションではなくコーゼーション的思考。

オ:〇
 顧客を巻き込み製品改良を進めるのは「クレイジーキルトの原則」(ステークホルダーとの協働)に合致する。


学習のポイント

  • エフェクチュエーションの基本原則
    手中の鳥(既存資源活用)、許容可能損失、レモネード(偶発性活用)、クレイジーキルト(協働)、パイロット・イン・ザ・プレーン(主体性)を押さえる。
  • コーゼーションとの対比
    コーゼーションは「目標設定→手段選択→計画実行」の予測型。エフェクチュエーションは「手段から出発→機会を創出→柔軟に展開」の創発型。
  • 誤答肢の特徴
    将来予測や長期データ分析に基づく利益目標設定はコーゼーション的であり、エフェクチュエーションの文脈では不適切。