難易度・正答率・重要度
- 難易度:★★★☆☆(組織文化論の基礎理解が必要)
- 正答率:★★★☆☆(正答率50〜70%。標準的)
- 重要度:★★★☆☆(E.シャインの組織文化論は頻出テーマ)
問題文
組織メンバーの行動や思考パターン、価値観などに影響を与えるものとして組織文化は注目されてきた。組織文化についての代表的な研究者であるE. シャインの組織文化論に関する記述として、最も適切なものはどれか。
ア
質問票調査は組織文化の内容を的確に把握するための有効な方法であることから、組織文化に関する質問票調査を定期的に実施すべきである。
イ
組織文化は組織内部の統合という問題の解決に役立ってきたものであるため、長く続いている組織では組織文化を変革すべきではない。
ウ
組織文化は明文化された経営理念・価値観に沿って醸成されるため、組織のリーダーがそれらの変更を行えば組織文化の変革がおのずと達成される。
エ
組織メンバーであれば、目に見える組織構造や儀礼といった「人工物(artifacts)」を手がかりとして組織文化の「基本的仮定」を読み解き、組織メンバーではない第三者に組織文化の全容を説明することは容易に行える。
オ
組織メンバーの採用や昇進の際にリーダーが適用する基準は、組織文化に影響を及ぼす。
出典: 中小企業診断協会|2024年度 第1次試験問題|企業経営理論(PDF)
解答
正解:オ
解説
ア:✕
質問票調査は表層的な意識や態度を把握するには有効だが、シャインのいう「基本的仮定」のような深層文化を的確に捉えることは難しい。
イ:✕
組織文化は環境変化に適応するために変革が必要な場合もある。長寿命の組織でも文化変革は重要課題となる。
ウ:✕
経営理念や価値観の変更だけで文化が自動的に変わるわけではない。文化は深層的であり、行動や制度を通じて徐々に変化する。
エ:✕
人工物(artifacts)は文化の表層にすぎず、そこから深層の基本的仮定を完全に読み解くのは困難。第三者が容易に全容を説明できるものではない。
オ:〇
採用や昇進の基準は、組織が何を重視するかを示し、組織文化の形成・維持・変革に大きな影響を与える。シャインもリーダーの行動を文化形成の重要要因と位置づけている。
学習のポイント
- シャインの組織文化の3層構造
人工物(artifacts)、表明された価値(espoused values)、基本的仮定(basic assumptions)の3層で構成される。 - 文化の変革要因
リーダーの採用・昇進基準、報酬制度、意思決定スタイルなどが文化に影響を与える。理念変更だけでは不十分。 - 文化の把握と限界
質問票調査や観察で表層は把握できるが、深層の基本的仮定は容易に捉えられない。文化理解には時間と多面的なアプローチが必要。