過去問解説(企業経営理論)_2024年(令和6年) 第17問

難易度・正答率・重要度

  • 難易度:★★★☆☆(各次元の対応関係を正確に把握)
  • 正答率:★★★☆☆(正答率50〜70%。標準的)
  • 重要度:★★★☆☆(リーダーシップ論の頻出)

問題文

社会や組織の転換期において、既存の体制や構造を変革するために発揮されるリーダーシップを「変革型リーダーシップ」と呼ぶ。変革型リーダーはフォロワーの価値観や態度を変化させ、フォロワーとの間で相互に刺激し合い高め合う関係を築くとされる。

一方で、定常的な状況下において有効な成果をあげるために、ギブ・アンド・テイクの交換関係をフォロワーとの間に築くことでフォロワーへの影響力を発揮するリーダーシップを「交換型リーダーシップ」と呼ぶ。

B. バスらによると、変革型リーダーシップと交換型リーダーシップは、それぞれ複数の異なる次元から構成される。これらの次元に則して、変革型リーダーシップと交換型リーダーシップの代表例を以下に示す。両リーダーシップとそれぞれの代表例との対応関係の組み合わせとして、最も適切なものを下記の解答群から選べ。


<変革型リーダーシップまたは交換型リーダーシップの代表例>
a 業績目標を達成した場合に何が報酬としてフォロワーに与えられるかを示す。
b 魅力的な将来ビジョンを打ち出し、ビジョンを実現する意義をフォロワーに話す。
c フォロワーがルールや基準から逸脱していないか日常的に注意を払う。
d フォロワーにとって理想的な模範となるべく率先して行動する。
e 前提を見直すことで、フォロワーに新たな視点から問題解決するよう促す。
f 個々のフォロワーのニーズや能力の多様性を認め、フォロワーの強みを伸ばそうと支援する。
g フォロワーがリーダーや組織に対して誇りや尊敬の念を持つように促す。
h 問題が深刻になってから事後的に問題に介入する。

〔解答群〕
ア 変革型リーダーシップ:a、b、d、f、h / 交換型リーダーシップ:c、e、g
イ 変革型リーダーシップ:a、c、d、e、g / 交換型リーダーシップ:b、f、h
ウ 変革型リーダーシップ:a、c、e、f、g / 交換型リーダーシップ:b、d、h
エ 変革型リーダーシップ:b、c、d、e、h / 交換型リーダーシップ:a、f、g
オ 変革型リーダーシップ:b、d、e、f、g / 交換型リーダーシップ:a、c、h

出典:中小企業診断協会|2024年度 第1次試験問題|企業経営理論(PDF)


解答

正解:オ


解説

  • 変革型の代表次元(バス):理想化の影響(d・g)、鼓舞的動機づけ(b)、知的刺激(e)、個別的配慮(f)。これらがフォロワーの価値観や認知を変え、高め合う関係を作る。
  • 交換型の代表次元:条件付き報酬(a)、例外による管理(c:能動的/h:受動的)。目標・規則逸脱の監視と成果=報酬の交換で統制する。
  • よって「変革型:b、d、e、f、g」「交換型:a、c、h」を示すオが最適。他の選択肢は変革・交換の次元が取り違えられている。

学習のポイント

  • 変革型の4次元(4I)
    理想化の影響(模範・尊敬)/鼓舞的動機づけ(ビジョン)/知的刺激(前提の見直し)/個別的配慮(育成・支援)。
  • 交換型の主要次元
    条件付き報酬(目標達成=報酬の明示)/例外による管理(能動的監視=c、受動的介入=h)。
  • 見分け方のコツ
    ビジョン・尊敬・育成・視点転換は変革型。報酬の取り決め・規則逸脱の監視・事後介入は交換型。