過去問解説(企業経営理論)_2024年(令和6年) 第20問

難易度・正答率・重要度

  • 難易度:★★☆☆☆(基本知識問題)
  • 正答率:★★★★☆(正答率70%以上。比較的易しい)
  • 重要度:★★★☆☆(組織行動論の基礎。頻出テーマ)

解答

正解:ア


問題文

組織や集団においては、意見の相違や利害の不一致から、個人間でコンフリクトが発生することが一般的である。コンフリクトへの対処は、自己の利益を追求する度合いと、相手の利益追求を許容し協力する度合いとの組み合わせに応じて、「回避」、「競争」、「協調」、「妥協」、「適応」の5類型に分類される。コンフリクトへの対処に関する記述として、最も適切なものはどれか。


「回避」とは、自己の利益を強く主張しない一方で相手の利益もあまり許容できない場合に、問題解決を延期して様子を見るという対処である。互いの対立点が表立つのを避けたい場合にとられやすい。
「競争」とは、相手の利益を最大限に許容しつつ、相手に命令したり相手を説得したりすることで自己の利益も追求するという対処である。権力志向的で高い職位の人間から、順応的な低い職位の人間に対してとられやすい。
「協調」とは、双方がある程度の利益を獲得しつつ互いに犠牲も払うという対処である。互いの対立点を曖昧にすることでコンフリクトを自然に解消しようとする場合にとられやすい。
「妥協」とは、当事者の一方のみが自己の利益を犠牲にして相手の利益を最大限に許容するという対処である。互いにある程度の利益をとりつつ犠牲も払うという折り合いがつけられない場合にとられやすい。
「適応」とは、相手の利益を犠牲にして自己の利益を追求するという対処である。自己の利益を一方的に追求することで、相手との長期的な関係が損なわれても問題ないと判断される場合にとられやすい。

出典: 中小企業診断協会|2024年度 第1次試験問題|企業経営理論(PDF)


解説

ア:〇
 「回避」は自己の利益も相手の利益も強く追求せず、問題解決を先送りする対処。対立を表面化させたくない場合に選ばれる。

イ:✕
 「競争」は自己の利益を最大化し、相手の利益を抑える対処。相手を説得・命令するが、相手の利益を最大限許容するわけではない。

ウ:✕
 「協調」は双方が利益を最大化し、Win-Winを目指す対処。犠牲を払う妥協とは異なる。

エ:✕
 「妥協」は双方がある程度の利益を得つつ、同時に一部を犠牲にする折衷的な対処。一方のみが犠牲になるわけではない。

オ:✕
 「適応」は相手の利益を優先し、自己の利益を抑える対処。自己利益を一方的に追求するのは「競争」に近い。


学習のポイント

  • 5つの対処スタイル
  • 回避:自己利益も相手利益も低 → 問題を先送り
  • 競争:自己利益高・相手利益低 → 強硬姿勢
  • 協調:自己利益高・相手利益高 → Win-Win志向
  • 妥協:双方が一部を犠牲にして折衷
  • 適応:自己利益低・相手利益高 → 相手に譲る
  • 判断基準
    「自己の利益追求度」と「相手の利益許容度」の2軸で整理すると理解しやすい。
  • 実務への示唆
    状況に応じて適切な対処スタイルを選択することが、組織内の健全な人間関係や効率的な問題解決につながる。