過去問解説(企業経営理論)_2024年(令和6年) 第22問

難易度・正答率・重要度

  • 難易度:★★★☆☆(組織学習理論の基礎理解が必要)
  • 正答率:★★★☆☆(正答率50〜70%。標準的)
  • 重要度:★★★☆☆(組織学習・知識創造論は頻出テーマ)

問題文

組織学習に関する記述として、最も適切なものはどれか。


「有能さの罠(competency trap)」とは、これまでの学習の結果として高い能力を構築し成果を上げているために、学習をやめてしまうことである。
高次学習とは組織の上位階層のみで生じる行動レベルの学習であるのに対して、低次学習は組織の下位階層のみで生じる行動レベルでの学習である。
組織学習とは、組織ルーティンの変化の中で組織成果に正の貢献をもたらすもののみを指す。
組織メンバーが環境の変化に対応した新しい知識を獲得しても、組織によって規定された役割が制約となって、組織としての学習が進まないことがある。
ダブルループ学習とは行動とその結果を振り返り行動を修正することを何度も繰り返すものであるのに対して、シングルループ学習とは行動を一度だけしか修正しないものである。

出典: 中小企業診断協会|2024年度 第1次試験問題|企業経営理論(PDF)


解答

正解:エ


解説

ア:✕
 「有能さの罠」とは、過去の成功体験に依存しすぎて新しい学習や探索を怠ることで環境変化に適応できなくなる現象。学習をやめること自体ではなく、既存能力への過度な固執が問題。

イ:✕
 高次学習(ダブルループ学習)は組織の前提や価値観を問い直す学習であり、階層に限定されない。低次学習(シングルループ学習)は行動修正にとどまる。上下階層の区別ではない。

ウ:✕
 組織学習は成果に正の貢献をもたらす場合だけでなく、誤った学習(負の学習)も含む。

エ:〇
 個人が新しい知識を得ても、組織の役割や制度が硬直的であると、組織全体の学習に結びつかないことがある。組織学習の限界を示す典型例。

オ:✕
 シングルループ学習も繰り返し行動修正を行うが、前提や価値観は問い直さない。ダブルループ学習はその前提自体を修正する点が異なる。


学習のポイント

  • 有能さの罠
    成功体験に固執し、新しい探索を怠ることで環境変化に適応できなくなるリスク。
  • シングルループ学習とダブルループ学習
    シングルループ=行動修正にとどまる。
    ダブルループ=行動の前提や価値観を問い直し、根本的な変革を促す。
  • 組織学習の限界
    個人の学習が組織に制度化されない場合、知識が活用されず組織学習が進まない。役割・制度・文化が制約要因となる。