難易度・正答率・重要度
- 難易度:★★★☆☆(各段階の特徴と課題を整理)
- 正答率:★★★☆☆(正答率50〜70%。標準的)
- 重要度:★★★☆☆(組織ライフサイクルの基礎。頻出テーマ)
問題文
組織のライフサイクル仮説によれば、組織は発展段階に応じて直面する課題が異なる。組織のライフサイクルを起業者段階、共同体段階、公式化段階、精巧化段階に分けて考えるとき、それぞれの段階に関する記述として、最も不適切なものはどれか。
ア
起業者段階では、起業家の創造性や革新性が重視されるとともに外部からの資源獲得が優先されるが、組織の成長とともに経営管理を実行できるリーダーシップが求められるようになる。
イ
共同体段階では、組織メンバーの凝集性の向上を図るべくトップはリーダーシップを発揮するが、トップダウンによって部下のモラールダウンが生じないようにトップは権限委譲を進めることが求められる。
ウ
公式化段階では、さまざまな規則や手続きが導入され、公式的な調整によって安定性や効率性が追求されるようになるが、組織構造が複雑化するにつれて官僚制の逆機能が顕著に生じるようになる。
エ
精巧化段階では、安定性や効率性を省みず公式的な構造を解体するとともに、新たな成長機会を自ら発見するリーダーシップの発揮が課題となる。
出典:中小企業診断協会|2024年度 第1次試験問題|企業経営理論(PDF)
解答
正解:エ
解説
ア:〇
起業者段階は創造性・革新性・外部資源獲得が重視される。成長に伴い、計画・管理・制度化を担えるリーダーシップ(経営管理能力)への移行が課題となる。
イ:〇
共同体段階はビジョンや価値観の共有で凝集性を高める局面。過度なトップダウンはモラールを損ねうるため、権限委譲や参加型リーダーシップが求められる。
ウ:〇
公式化段階では規則・手続き・公式的調整により安定性・効率性が向上する一方、官僚制の逆機能(硬直化・サイロ化)が顕在化しやすい。
エ:✕
精巧化段階の課題は、公式的構造を「解体」することではなく、既存の制度を保ちつつ柔軟性・協働・イノベーションを促す再活性化(構造の補完・分権・プロジェクト化等)にある。安定性・効率性を無視するわけではない。
学習のポイント
- 起業者段階の焦点
創造性・機会探索・外部資源獲得を重視し、成長に伴って管理能力への移行が必要。 - 共同体段階の課題
凝集性を高めつつ、権限委譲と参加を進めてモラール低下を防ぐ。 - 公式化/精巧化の対比
公式化は安定・効率とともに逆機能が顕在化。精巧化は公式構造を活かしながら柔軟性・イノベーションを補完して再活性化する。